かげろうの殺しかた

ゆっくりと、右手を小太刀の柄に持って行った。

「物頭相模惣右衛門の娘を辱めたか?」

この男だ。
この男に間違いない。

腕の八咫烏は何よりも雄弁にそれを証明していたが、隼人は尋ねた。

「二年前だ。答えろ」

二年前? と伝九郎は眉を上げて笑い出した。

「なんだ、おぬし、あの女の知り合いか」

心の臓が大きく鳴った気がした。

「どこの女かなど知らぬわ」

吐き気のする軽薄なニヤニヤ笑いを顔に貼りつかせて、男は言った。

「武家の娘のように、気位の高い女の顔が屈辱と恐怖に歪む様は楽しかったぞ。
あの女、どうした? 自害でもしたか?」



加那──



お前は、こんな男に……!



かっと頭に血が上った。