齢は隼人より少し上だろうか。
若い浪人風の男だった。
にたにたと締まりなく笑む顔は少年のような印象があった。
隼人と円士郎は、渡世人たちに連れられて庭に面した廊下を渡っていたのだが、廊下に向けて開け放たれた障子の奥の座敷に、その剣客はひっそりと座っていた。
渡世人たちが「先生」と呼びかけたので用心棒であることが知れ、円士郎の口から「蜃蛟の伝九郎」という呟きが漏れ出でるのを聞いて、
隼人はその男こそが加那を弄んだ憎い相手だということを知った。
行灯の光の中でゆらりと立ち上がり、若い浪人はにやついた表情のまま武家の女が抱きたい、人質にしたおつるぎ様はどこだと渡世人たちに尋ね、
隼人は全身の血液が逆流するのを感じた。
激昂して今にも斬りかかりそうになる円士郎の腕をつかんで止め、隼人は目の前の浪人に「腕を見せろ」と言った。
蜃蛟の伝九郎は隼人を一瞥し、これのことかと言って袖を捲って見せた。
加那から──
そしてあの遊水とかいう紅毛の血を引く男から聞かされたとおりに──
三本足の黒いカラスが、その腕にいた。
斬れ、斬れ、斬れ。刀が呪いの声を発して騒いだ。
若い浪人風の男だった。
にたにたと締まりなく笑む顔は少年のような印象があった。
隼人と円士郎は、渡世人たちに連れられて庭に面した廊下を渡っていたのだが、廊下に向けて開け放たれた障子の奥の座敷に、その剣客はひっそりと座っていた。
渡世人たちが「先生」と呼びかけたので用心棒であることが知れ、円士郎の口から「蜃蛟の伝九郎」という呟きが漏れ出でるのを聞いて、
隼人はその男こそが加那を弄んだ憎い相手だということを知った。
行灯の光の中でゆらりと立ち上がり、若い浪人はにやついた表情のまま武家の女が抱きたい、人質にしたおつるぎ様はどこだと渡世人たちに尋ね、
隼人は全身の血液が逆流するのを感じた。
激昂して今にも斬りかかりそうになる円士郎の腕をつかんで止め、隼人は目の前の浪人に「腕を見せろ」と言った。
蜃蛟の伝九郎は隼人を一瞥し、これのことかと言って袖を捲って見せた。
加那から──
そしてあの遊水とかいう紅毛の血を引く男から聞かされたとおりに──
三本足の黒いカラスが、その腕にいた。
斬れ、斬れ、斬れ。刀が呪いの声を発して騒いだ。



