かげろうの殺しかた

それでも隼人は少女の動きを見て避ける。

それだけは、この娘に並ぶことのできる隼人の唯一の武器だった。


そして、何度目かの斬撃を交わし、
隼人が仕掛けた攻撃が少女の刀によって押さえ込まれ──互いの動きが止まる。


見知った者同士であるが故の、息を整え合う一瞬の休息が訪れる。

それに合わせて、隼人は刀を退いた。

納刀し、間合いを詰め、


即座に動きを読み切り隼人の攻撃を迎え撃つ位置に刀を持ってくる少女に向かって、居合いのように鞘走りさせた小太刀を抜刀し斬り上げる。

きらきらと雨粒を散らして蜘蛛の子の糸のように刀の軌跡が走り、


ゆらりと、娘の刀を擦り抜けて、隼人の剣は彼女の首の紐を切った。


相手の刀をとおり抜けて届く秘剣、糸遊を
隼人は初めて実戦で成功させたのだった。