かげろうの殺しかた

隼人が肩をつかむと娘は一瞬抵抗する素振りを見せ、隼人はためらった。
しかしすぐにそんな場合ではないと思い直して、花菖蒲の咲き乱れる岸へと力ずくで引きずり上げた。

男の力の前では少女の体は華奢で軽く、幾度も目にしていた鬼神の如き剣からは想像もつかぬほどあっさりと引き上げることができた。


ともかく助け上げて、ほっと息をつきながら隼人は少女を見つめた。

美しい娘である。
白いうなじが目に入り、雨に濡れた開きかけの花のつぼみを見ているようで、隼人はほんの少しだけ背筋にぞっと戦慄のようなものが走るのを感じた。

家中の若い侍たちや城下の男たちが、この男装の令嬢の姿を見かけるたびに騒いでいるのだということは知っていたが──

こうして改めて眺めると、
男の着物に身を包んでいても、その全身からは光が透けて漏れ出でるように、
か弱く
繊細で
清らかな
若い乙女だけが持つ瑞々しい独特の色香と魅力とが漂っていて、

完全に花開く前にそれを己の手で手折ってしまいたくなるような、男の危険な衝動を起こさせる魔力があった。

むしろ男装しているからこそなのか──人形のように整った色白の容姿との格差が、普通の町行く娘とは違った、まるでこの世の者ではないかのような中性的な妖艶さを作り出していた。

これで中身は少しも気取ったところのない、純朴な娘なのだ。

女遊びに長じた結城円士郎が狂うのもわかる気がした。