かげろうの殺しかた

河原に降りて、一瞬足を止める。



──想思鼠。



淡い、紫を帯びた青色が視界に飛び込む。



降りしきる梅雨の雨に濡れて、花菖蒲が群生している場所があった。

咲き乱れる淡い紫を帯びた青と白との花。

しっとりと雨のしずくを滴らせているその想思鼠色の花々を眺めて、思い出した。


加那はこの花が一番好きです。

この花が、雨の向こうに想思鼠色に煙っているのを見るのがとても好きです。


いつか隼人に、加那はそう言った。