【二】 わあわあ泣いている少女を見つめて、幼い隼人は途方に暮れた。 「迷子か? おまえ、どこの子だ?」 何度尋ねても、少女は何も答えずに泣きじゃくるばかりだった。 武家屋敷の建ち並ぶ界隈は、右も左も同じような白壁が続いており、敵の侵入を阻むために複雑に入り組んだ道は、ともすれば方向感覚を失わせる。 隼人はこの時、自分が何をしていたのかはよく思い出せない。 ただ、自分より幼い女の子が、 白壁の真っ直ぐ伸びる道の真ん中で、一人でしゃがみ込んで泣いていた。 それだけ記憶にある。