秘密基地




「よかった、ハヤト怒ってないんだね」

そう言うと、俺に背を向けて彼女は立ち上がって歩き出す。

「ちょっと、どこ行くんだよ!?」
「今日の寝床を探しに」
「寝床ってお前、家は?」

動いてた足が、止まる。
そして振り返って俺を見た。

「帰る場所、ないんだー」

悲しそうに笑った彼女に、変な気持ちが押し寄せる。
これはただの同情なのか、仲間意識なのか、分からない。

だけど彼女をこのまま行かせちゃいけないと思った。

「待てよ」

気がつけば、さっき掴んだ彼女の手首をまた俺は掴んでいた。
さっきは気がつかなかったけど、このまま力を入れたら折れてしまいそうだ。