からっぽな街

「お風呂、沸いてるよ。先、入ったら。」
「おー。さすが。ありがと。」
コートを脱ぎながら、レストランでもらった紙袋を机の上に乗せる。
「今日ね、シュークリームもらったんだよ。十四時間も働かされた。もう、最低!」
「うわー。大変だったね。そんなにはたらいていいわけ?」
「知らなーい。もう、足ぱんっぱんだよ。」
「ごはんは?」
「食べた。賄いで、ナポリタンだった。」
「ん。俺も、山中さんたちと牛丼食ってきた。じゃあ、メシ、いらねーな。」
「うん。いらない。私、お風呂入ってくる。テツヤ、シュークリーム、先食べてていよ。」
「さんきゅー。」
そう言いながら、私より先に、食べないことを知っている。テレビに夢中になっていたし、あのまま、動くことはないだろう。