からっぽな街

「うふふ。買っちゃった。」
 と言って、嬉しそうに微笑むハナ。
「よかったねえ。これで、キャンプのとき、寒くなっても安心だね。」
「わーい。」
嬉しそうに、歩きながら、袋を持っている手を、大きく振る。
 羨ましいと思う。ショップ店員の仕事をしているとき、こういうやりがいがあった。女の子の、新しい服を手に入れた時の、満足そうな素直な笑顔を見るのが好きだった。
 買い物に疲れたので、珈琲ショップで休憩することにした。
テーブルに向かい合ってアイスコーヒーを飲みながら、「ありがとうございました。」と笑ったショップ店員の姿を思い出す。
懐かしかった。まだテツヤに出会う前の自分。
記憶のかなたに、同じ姿をしながら、笑っていたことを、もう戻ることの出来ない、尊い出来事のように感じた。