席に着いた私は上野さんを睨みながら言った。

「しつこいですね? 何なんですか?」

私の言葉を無視して上野さんはワインをたのむ。
持って来られたワインを上野さんは一口飲んだ。
そして、あの日のようにまた真剣な顔で言った。

「瑠美依さん。・・・いや、吉村瑠璃さん。
 俺と結婚して下さい。」

初めて店に来た時と同じ言葉。
そのとき以上に、目が 声が真剣だった。
でも、答えは決まってるから。

「無理です。
 用件がそれだけでしたら、お引き取りお願いします。」

席を立つ私の腕を掴み、有無を言わさないオーラを出す。
私はしぶしぶ席に着く。

「俺は本気だ。酒に酔ってる訳でもない。
 お前ーーー・・・俺のこと覚えてないだろ?」
「えっ?」
「おれ、お前と同じ高校だったよ。」
「嘘・・・。」
「嘘じゃねーよ。俺、卒業式の時お前に告白したから。」

そう言われて高校生の時を思い出そうとする。
だけど、思い出そうと思ってもでてくるのは彰平のことばかり。
笑った顔。
すねた顔。
切なそうな顔。
そして、最後に見た
     ーーーー・・・苦しそうな顔。