「鈴君か彰平君がすーーー『バシッ』」
私の声は乾いた音でかき消された。
私の右の頬が赤くジンジンした。

そんな私の冷静な頭の中に響くような、叫び声にちかいような声で桜チャンは私に向かっていった。

「何それっ?! あんたバカじゃないの?
 人の.......人の好きな人取っておいて、よくそんなことが言えるよねっ!!!
 私は鈴のことが好きだった、、、それだけだったのに。あんたが横取りした!
 アンタは私から大切なものをとっていく。私に寂しさを押し付ける。
 中学校からずっと好きだったのに....やっと両想いになれたハズだったのに。。。
 あんたがあのトキに死んでくれたら良かったのに。こんなことに.....ならなかったのに。」

耳に入るのは桜チャンの泣く声。
目に映るのは桜チャンの泣く姿。
感じるのは桜チャンの
    悲しみ 怒り 切なさ

私は桜チャンに何も言えなかった。
私もその気持ちに似たものを知っているから。



”あの子がいなかったらいいのに”

”あの子なんて死んじゃえばいいのに”

”あの人がいてくれればそれだけでいい”

そんな気持ち。
自分でも怖く思うほど黒く渦巻くもの。
真っ暗な森に迷うようで。
暗闇の中、人は光を求めてさまよている。