『吉村さんの友達ですか?』
「はい。そうですけど。」
『吉村さんの脳を検査したところ記憶障害になっている可能性が非常に高いことが分かりました。』
「えつ? 記憶障害......ですか?
 冗談はやめて下さい。」
『いいえ、冗談ではありません。
 つらいとは思いますが、こちらも早期回復を目指して頑張りますので。
 話は以上です。』



”記憶障害”
 ”ダメだよ、そんなんじゃ。”
医者の言葉と夢の中の彩花の声が頭のなかを回る。
俺は、どうすればいい....?



桜に医者からの話をして、一緒に瑠璃の部屋に行った。
ドアを開けると瑠璃が目を覚ましていた。

「あの.....誰ですか?」

医者の話を聞いて覚悟はしていたが、さすがにここまでされるとキツかった。
ついこの間までは一緒に話していたのに、今はまるで初対面の人。
記憶障害だと頭でも理解していても、実際に他人扱いされると頭が真っ白になった。


しっかりしないといけないのは俺なのに、目がぼやけてきて頬を冷たいものが流れた。
そんな俺をみて瑠璃は、
「大丈夫ですかっ?」
と言う。


そんなこと聞くなよ、瑠璃。
”大丈夫?”って聞かれたら”大丈夫だよ”としか言いようがないだろ。
大丈夫なワケないだろ、好きな奴に、大切な奴に他人扱いされて。
瑠璃、他人扱いしないでくれよ。
敬語やめろよ。
俺の名前呼んでくれよ。

頼むから........。



神様、瑠璃の記憶を返してよ。