今日はなんだかいつもより、家に着くのが早い気がして。


「ばいばい、康。」


あたしはいつものように、そう言って家の門をくぐった。


「…琴音!」


ドアノブに手をかけたまま、あたしは振り向いた。


「また明日な!ばいばい。」


明日は土曜日なのに、そう言い残して家へと入って行った。






あたしは浮かれてた。


康が《ばいばい》って言ってくれた。


ただそれが嬉しくて。






―――これが最後の


「ばいばい」


になる、そんなことも知らずに―――。