【長編】唇に噛みついて



『何で連絡してこなかったんだよ』


「え?」


『花火大会……行かないのか?』


「うん。行かない。行く人いないもん」


そう言うと、電話の向こうの須藤はまたため息。
そして少しそっけなく言った。


『行く人……いんじゃん』


「え?」


ドキッと胸が高鳴る。


『一緒に行くぞ。明日』


嘘……。
夢じゃないよね?
聞き間違いじゃないよね?
てか……。


「もう!もっと早く誘いなさいよ!」


『は?逆ギレかよ……』


そうだよ。
嬉しすぎて……ムカついてきたよ。


『だったら聖菜が誘えばよかっただろ?』


そんな事言ったって……。
だって……。


「他に行く人がいると思ったんだもん」


そう言うと、須藤の呆れたような声が聞こえてくる。


『他に誰と行くんだよ……』


ねぇ……。
今の言葉、あたし以外に誰と行くんだよって受け取ってもいい?


すると須藤は少し意地悪な声で言った。


『ま、こうなるとは分かってたんだけど』


「え?」


『きーちゃんは俺が誘うの待ってるんじゃないかって思ってた』