【長編】唇に噛みついて



なんて考えながら、あたしはボーっとする。


「へぇーよかったね」


そう言って顔を少し上げると、真弓が眉間に皺を寄せて覗き込んでくる。


「へぇーよかったね……じゃないわよ!」


「は!?」


突然両頬を掴まれてあたしは目を丸くする。
すると真弓はあたしを見つめて言う。


「何他人事みたいに言ってるのよ!あんたはどうするのよ?」


「へ?どうするって?」


そう言ってキョトンとすると、真弓は大袈裟なくらい大きなため息をついた。


「須藤くん!誘わないの!?」


須藤……?
あぁ……そっか。


「誘わないよ……。どうせ他に行く子いるでしょ?モテるんだから」


そうだよ……。
須藤にはいっぱい行く人がいるんだから。


「誘うだけ……無駄でしょ?」


そう言ってあたしは机に顔を伏せた。
すると真弓はあたしの髪を撫でた。


「でもさ?言ってみないと分かんないじゃんか」


そうなんだろうけど。
やっぱり……。


「あたし今まで好きになった男の中でろくな男いなかったしさ……。怖いんだよね」


恋をするってこんなに怖かったっけ?って思うくらいに……。
あたし口悪くて強気な性格だけど、ホントはすごく臆病で。
弱虫で……気持ちを伝えられない。


「だからいいの」


そう言うと、真弓は眉を下げた。


「……聖菜」


今年の花火大会は……家で過ごそう。