【長編】唇に噛みついて



あたしは思いっきり零を睨むと、零はキョトンとした顔で口を開く。


「何って……揉もうと思って?」


変な事言うな!
ストレートに言うな!


「最悪……」


ホント、ムードの欠片もない。


あたしは大きなため息をついていると、零はそっとあたしの顔を覗きこんでくる。


「何?駄目なの?」


「駄目っていうか……あたしはムードとか大切にしたいの」


女の子はそういうものなの。
男は違うかもしれないけど……。


そう思って、恥ずかしくて俯いていると、零はあたしを抱き寄せる。


「ふーん。でもそんなの俺には関係ないけど」


な!
こいつヤる気だ!


咄嗟に離れようとすると、零はムスッとした顔であたしを見下ろす。


「きーちゃんてさ」


「?」


「俺の事焦らすの好きだよね」


はい?


「恥ずかしいとか、ムードとか言って拒んでさ」


それは……。
あんたが突然すぎるからでしょ。


そう思っていると、零はグッとあたしに顔を近づけて囁く。


「……まぁ、そういうところもそそるんだけど」


カアアアアアァァ……。


顔に熱が集中していく。