「何?ニヤニヤして妄想でもしてた?」
!?
「何で!分かったのっ……っ」
しまった!
あたしはハッとして慌てて両手で口を押さえる。
すると零は、ニヤッといつもの意地悪な笑みを見せた。
口が滑った!
これじゃ、あいつの思う壺!
「へー?どんな事妄想してたの?教えてよ」
ほらね。
やっぱり。
口元だけ微笑んで、ジリジリと近づいてくる零を見てそう思った。
「妄想してない!」
うん!
してない。
あたしがしてたのは、“妄想”じゃなくて“想像”よっ。
「ふーん?」
大きな声で否定するあたしの声なんてまるで聞いてない様子で零はあたしに近づく足を止めない。
しばらくすると、背中にコツンと固い感触に振り返ると、壁!
あたしは慌てて零の方を見ると、もう30センチもない。
少しずつ近づいてくる整った顔に真っ赤になりながらあたしは口を開く。
「何で近づいてくるのよ!?」
とうとう両側の壁に手をつかれて逃げられなくなっていると、零はフッと微笑んであたしを見下ろした。
「何でってきーちゃんが教えてくれないからだよ?」
はああぁ!?
よく分からない答えにあたしは、眉間に皺を寄せた。
「意味分かんない。妄想してないんだから教えられる訳ないじゃん!」
そうよ。
あたしのは想像なんだから。
変にヤラシイ言い方しないでよ!

