【長編】唇に噛みついて



あたしはまたまた思いっきりビンタしてしまった。
ハッと我に返ったあたしは、頬を手で押さえているそいつを見てギョッとした。


どうしよ~!!
またやっちゃったぁ!!


「ご、ごめん!あたしっ帰る!!」


あたしはあたしを見ているそいつに頭を提げて逃げるように走った。


2度も殴ってしまったぁ!
どうしよう!
さすがにあいつキレるよー!!
てか何なのよ?あいつはぁ!
大人馬鹿にしてるつもり?
ふざけんじゃないわよー。
あんな奴殴られて正解よ。


あたしはパニック状態で走った。
でも運動不足のせいで息が切れだして、夜の人気のない公園で立ち止まった。


「はぁ……はぁ……」


膝に手をついて呼吸を整える。
走ったせいなのか、苦しくて何だか目頭が熱くなった。


あたし……ホントに下に見られてる。
彼氏には浮気されて。
年下にはからかわれて。
ホントに男に縁がない。


「ホントッ……最悪」


ムスッとしていると、バックがない事に気付いた。


あれ?
手に持っていた筈のバックがない。


「え?え?」


あたしは頭を巡らせる。
そうだ!
さっき殴った時……放したんだ。
って事は、バックはあそこにある。


「どうしよー!!」


あたしは1人頭を抱えた。


どうしよ。どうしよ。
あそこに戻るのはちょっとヤバイよ!
でも……バック……。
あそこには財布とかいろいろ入ってるし。


「……っ」


行くしか、ない。