他の子になんか、あげないもん。
誰にもあげないもん。
零だけは……離さないもん。
あたしはギュッと零に抱きついた。
その思いを抱きしめるように。
「簡単に離さないから……」
「ん?」
小さく呟いた声。
その声は零の耳に届かなかったらしく、あたしを見下ろして右の眉を上げてあたしを見下ろした。
「嫌だって言っても離さない。絶対に離さないもんっ」
そう言って目をギュッと閉じて、零に回す腕をきつくした。
するとそれに答えてくれるように、零はフッと微笑んで頭をさらに引き寄せるようにしてあたしを抱きしめた。
そしてそっと耳たぶにキスを落として、指に髪を絡めた。
「そうしてもらうつもりだから」
また上から目線……。
他の人にそんなこと言われたら、イラッとくるあたしだけど。
不思議と零に言われると素直に嬉しい。
あたしは頷きながらそっと零の胸に顔を埋めた。
ほんのりと香る香水とは違うにおい……。
それは零の香りで、あたしはスウーッと鼻で空気を吸い込んだ。
甘いにおい……。
このにおいを嗅ぐと落ち着く。
すると零は何も言わずにあたしをギュッと抱きしめる。
それに気づいて顔を上げると、零はニッと笑った。
「俺も言おうとしてた」
「え?」
言おうとした……?
キョトンとすると、零は無表情であたしを見下ろす。
そしてさっきの無表情とは変わって、優しく微笑むとあたしのほっぺをつねる。
「俺こそ……嫌だって泣き喚いても。殴られても。何されても、お前の事離す気ないから」

