零の言葉に驚きながら、あたしは咄嗟に自分の前で腕をクロスさせた。
そして零を睨む。
するとそんなあたしの行動を見下ろしていた零はムッとした表情であたしを睨み返す。


「そんな警戒しなくたってヤんねぇよ」


「え……」


零が……?
あの零が??


想像もしていなかった零の言葉にあたしは目をテンにする。
するとニヤッと片方の口角を上げて笑う。


「何?それとも襲ってほしかった?」


「っな!?」


ギョッと目を見開く。


どうする?あたし……。
今まで、拒んで拒んで拒み続けてきたけど……。
“いいかな”なんて、ちょっと思ってる自分がいる。
零と……、してもいいかなって思う自分がいる。
少しでも触れたいって思ってる自分がいる。


「いい……」


「嘘。冗談だよ」


頷きそうになった瞬間、そんなあたしを見下ろして零はフイッと視線を逸らした。


「え?」


嘘……?
冗談……??


固まっていると、零は何も言わずに靴を脱ぎあたしの部屋へと入っていってしまった。
通り過ぎた直後我に返ったあたしは、慌ててその後を追う。
リビングへ入ると、ベッドに座っている零が目に止まる。


……馬鹿、あたし。
何零がベッドに座ってるだけで赤くなってるのよ。


心臓が鳴り響く自分にツッコミを入れるとあたしは何食わぬ顔でテーブルの前に座った。
後ろに感じる零の温もりを精神を集中して意識していると、ゆっくりと零はあたしの背中を腕を回す。
そして何も言わずに零はギュッとあたしを抱きしめた。


「こっち……来いよ」


囁くように言われた言葉に、あたしの心臓はドキンと音をたてる。