【長編】唇に噛みついて



ここ等じゃ1番大きな学校である乙女川高の文化祭はすごい。
教室の装飾とか、みんなの衣装とか凝っていて、目を奪われる。
ボーッと前を見ずに、キョロキョロしながら歩いていると、急にグイッと手を引かれた。


「っわ」


よろめいて慌てて零にしがみ付くと、零はニヤッと右口角を上げて笑った。


「前向いて歩けよ」


いつもと違う零に、ドキッとして顔をポッと赤く染める。
しがみ付いた腕からほんのり香水の香りがあたしの鼻をかすめる。
あたしをジッと見つめてくる零から視線を逸らしてあたしは零の腕で顔を隠した。


「だって……すごいんだもん」


「そぉか?」


ボーッとしながら辺りを見渡す零。
それを見上げながら、あたしは微笑んだ。


「すごいよ。あたしが高校生の頃の文化祭とは比べ物にならないくらい」


そう言うと、零はあたしを見下ろしながら口を開いた。


「きーちゃんのクラスは何やったの?」


「あたし?あたしのクラスはねー。たこ焼きだったなぁ」


上を見上げて思い出しながら答えると、零はフッと微笑む。
そしてキュッとあたしの手を握りながら言った。


「へー」


「高校、楽しかったなぁ……」


恋したり、友達と遊んだり。
いろいろあったな……。


ボーッと思い出していると、零はギュッと手を握った。
それに気づいて上を見上げると、零はニッと笑った。


「でもさ?俺達が同じ時同じ高校に通ってたら……楽しかったと思わない?」


「え?」


あたし達が……同じ高校に?
もしそうだったら……。
一緒に下校したり、お弁当作ってあげたり。
授業サボったり……したのかな。
憧れるけど、叶う事のない事。
でも……もしそうだったらって考えた。