【長編】唇に噛みついて



仕事も順調に終わってしまい。
あたしは真弓に腕を掴まれて連行された。


「もう分かったから……自分で歩くっつーの」


あたしは掴まれた腕を放そうとしながら歩く。
すると真弓は振り返ってあたしを見ると、少し睨んだ。


「駄目。あんた手放したらどっか行くでしょ」


人を犬みたいにいうな。
逃げないっつーの。
さすがにここまでされたら、諦めつくわ。


あたしはムッとしながら仕方なく真弓に腕を引かれる事にした。
ホントは嫌だけど。


何であたしが……。なんてブツブツ呟いていると、真弓は足を止めた。


「あぁー。間島くぅん♪」


ん?声が違う。


真弓のいつもより高い声に顔を上げると、お店の前に2人の制服姿の男子校生を見つけた。


「真弓さん、こんばんわー」


そう言って笑顔で手を振る奴。


あぁ……あれが、真弓のお気に入りの間島くん。
何となく……雰囲気的には癒し系?
可愛い感じ?


駆け寄ってきた間島くんは真弓に微笑んでから、あたしを見て軽く頭を提げた。


「こんばんわ。聖菜さん」


「あ、こんばんわ」


あたしも軽く挨拶すると、間島くんはあたしを見て言った。


「それで聖菜さんに会いたがってたのは……あいつです」


少し遅れてゆっくりとあたし達の方に歩いてくる長身の男。
あたしはそいつに視線を向けた瞬間。
……目を見開いた。