【長編】唇に噛みついて



でもその沈黙を破ったのは、男の子だった。


「えぇ!?零くん、彼女いたの!?」


ん?どうしたんだろう。
この驚きようは……。


そう思っていると、櫂さんが口を開く。


「そうなんだよ。やっと零、1人にしぼったらしいよ」


「えぇ、零くんが!?」


コソコソと……(でも、大声で)会話をしている2人。
すると須藤は不機嫌そうに、男の子の首根っこを掴んだ。


「こいつ……俺の弟」


……弟。
やっぱり、似てると思った。
でもどっちかというと、櫂さん似?
櫂さんに先に会ったから弟だって分かったようなもんだ。
だってあんまり須藤に似てないから。


ボーっと弟くんを見つめていると、弟くんは笑った。


「僕、須藤椎(スドウシイ)。高校1年なんだ」


そう言って可愛らしい笑顔を向ける。


高校生だったんだ……。
何か身長160センチしかなさそうに見えたし。
童顔だし……。
中学生かと思っちゃった。
てか、そこら辺の女の子より可愛いと思うんだけど……。
それは何となく可哀想な気がしたから言わなかった。


「よろしくね。椎くん」


そう笑顔で言うと、椎くんはウルウルした目であたしを見つめる。


「うぅ~僕にもお姉ちゃんができるんだ。嬉しい♪」


そう言っていきなり椎くんは抱きついてきた。
するとすぐに須藤は手を伸ばして、あたしと椎くんの間に入る。


「椎」


「……っち」


は?
今、椎くん舌打ちした?
しかもすっごい悪い顔してた、よね?