【長編】唇に噛みついて



それから数十分。
車が止まり前に立ちふさがる大きな立派な一軒家に、あたしは目を見開いた。


何これ!?
超デカいんだけど!
てか、3階建て!!!!?
須藤って……相当な、お金持ち?


そう思っていると、隣にいる須藤は普通にその家へ入って行こうとする。
ついてこないあたしに気づいて振り返って須藤は眉間に皺を寄せる。


「……早く」


「あ、はいはい」


あたしは慌てて須藤についていくと、大きな家の中も立派で……。
あたしは口をあんぐり開けた。


「おじゃましまーす」


そう言った瞬間だった。


「あ。零くん!!」


少し高い声で、綺麗な黒髪の男の子。
中学生くらいだろうか?
でも、やっぱり……顔は整ったイケメンくん。
もしかして……。


なんて考えていると、男の子はあたしの存在に気づいた。


「あれ?」


首を傾げられて、あたしは慌てて挨拶をする。


「あ、初めまして。柏原聖菜っていいます」


自己紹介をすると、男の子はニッコリ微笑んだ。
そして可愛らしい目であたしを見つめる。


「もしかして……櫂くんの彼女!?」


「「は?」」


須藤とあたしの声が重なる。
すると櫂さんはニッコリ微笑んで、あたしの肩に手を置く。


「そうなんだよ~。おれのかのじ……」


「俺の」


すぐにそう言った須藤に、周りのみんながキョトン。