【長編】唇に噛みついて



「その事も謝るけど……」


「あ?」


「誕生日知らなくて、ごめん」


よく考えたら、他の人に聞いたりできたよね。
なのにあたし……。
当日まで知らなくって。
彼女失格……。


すると窓の外を眺める須藤はボソッと呟く。


「別に……そんな事気にしてないし」


そう言ってくれるけど。
あたしにしちゃ、そんな事じゃないんだよ。
大事な事なんだよ。
ホントにごめん……。


心の中で呟いていると、須藤はあたしを見下ろす。


てか……。
あたし、今から須藤ん家行くんだよね!?


「ねぇ!あたし……何か買って行った方がいい!?」


「は?何で?」


怪訝な顔であたしを須藤は見下ろす。


「だって……」


そういうのって普通買いに行くもんじゃない!?


そう思っていると、須藤は窓の外を見た。


「いんねぇよ」


え……。


「そ、そう……あ、でもせめて」


お菓子くらいは……。
そう言おうとした瞬間。


「必要ねぇから」


って睨まれたから、あたしは大人しくしている事にした。