少し不機嫌そうな須藤を見て我に返ったあたしは首を大きく振った。
「ううん。何でもないっ」
どうしよう……。
何か不謹慎だけど、嬉しいなんて思っちゃってる。
ただのあたしの思い過ごしなのかも知れないけど、心が温かくなった。
ニヤける……。
我慢できずに微笑んでいると、須藤は冷たい目であたしを見下ろした。
「……キモい」
「っな!」
彼女に向かってキモい!?
何て失礼な奴なんだ!
「キモくって悪かったわね」
少し傷ついて、あたしはフイッと視線を逸らしてムッとした。
いくらなんでも彼女に向かってキモいは、ないじゃないか!
ムスッとしていると、須藤はクスッと笑った。
そして少し乱暴にあたしの頭を撫でる。
「認めんなよ」
ドキ……。
そう言って須藤はあたしの手を握った。
須藤の大きな手から伝わってくるぬくもりに、あたしはドキッとする。
あぁ、もう嫌。
こんな時だって。
さっきまでムカついてたって言うのに。
その笑顔を見ただけで、またあたしの心臓は須藤にときめく。
顔を上げて須藤を見上げると、須藤は呟く。
「……行くぞ」
ゆっくりと歩き出す須藤に引っ張られる。
あたしは早足でついていきながら、須藤を見上げた。
「行くって……どこに?」
そう慌てて聞くと、須藤は前を向いたまま口を開く。
「……秘密」

