【長編】唇に噛みついて



すると須藤はゆっくりと唇を離して、あたしの顔を見下ろす。
そして意地悪な微笑みを浮かべて口を開いた。


「何?……もうギブ?」


っ……。悔しい……。
いつだって年下のくせにあたしより余裕で。


でも、言い返す余裕なんてあたしにはなくて、黙ったまま須藤を見上げる事しかできなかった。
すると須藤はフッと微笑んで、あたしの首元に口付ける。
その口付けと同時にチクリと淡い痛み。


「痛っ……」


そう言葉を漏らすと、須藤はあたしを見下ろしたままあたしの髪を優しく撫でた。


「きーちゃんは俺の。お前は俺だけ見てろよ」


ドキ……。
偉そうで、命令形だけど。
あたしってば、重症。
その言葉がすごく嬉しい。
だって、あたしは須藤のものなんだって思わせてくれるから。


「うん……」


気づいたら素直に頷いてて、そんなあたしを見て須藤は満足そうに笑った。