【長編】唇に噛みついて



須藤に連れられて、やって来た花火大会会場。
打ち上げ開始時刻の7時の40分前に着いたあたし達は、出店を見て回る。
でも、ものすごい人の人数。
周りは人、人、人で、浴衣で下駄を履いているあたしは、人混みに飲み込まれそう。


「う、わっ」


必死で須藤の後ろをついて歩いたけど、あたしは何かにつまずいた。
するとすぐに須藤はあたしの腕を掴んだ。


「あ、ぶねぇな……」


そう言って須藤は自分の方にあたしを引き寄せた。
そしてあたしの手をギュッと握る。


ドキ……。


変なの。
人混みでガヤガヤしてるのに……。
手を握られただけで、嬉しくてドキッとして。
周りの雑音が聞こえなくなる。


ボーっと須藤を見上げていると、須藤は黙ったまま、また歩き出した。
背が高いからか、見上げて須藤を見つめていると、涼しい顔をして人混みをすり抜けていく。
それに、整った顔立ちの須藤は目立つ。
周りの視線が集中して、後ろを歩いているあたしが恥ずかしくなる。


……周りからは、あたし達。
どういう風に見えてるのかな。
恋人……なんかに見えたりするのかな。


今まで人の目なんて気にしてなかったけど。
今日は特別、何だか気になった。


しばらく歩いていると、須藤の前に派手なメイクに露出度の高い服装の女の子達が立ちはだかった。


……え?


キョトンとしていると、女の子達は口を開いた。


「零じゃーん。あれ?何でぇ?今日来ないんじゃなかったのぉ?」


甘ったるい声。
聞いてるだけで吐き気がする。


どうやら須藤の同い年の子達らしい女の子達はそう言って笑う。
すると須藤は少し冷たい声で呟く。


「……あぁ」


須藤の後ろで背中を見ていると、1人の女の子が須藤の腕に手を絡めた。