そんなことをぶつぶついいながら制服に着替えていった。着替えが終わると俺は帰ろうと部室のドアノブを掴んだ瞬間、ドアの向こう側から知ってる声が聞こえた。

「笹本くん、待っててくれたの?」

「いや、俺も今部室を出たところだよ」

「そうなんだ。私、人を待たせるの嫌だからもし待たせてたら申し訳ないなと思って」

「花原さんだったらいくらでも待つよ。1時間でも2時間でも」

その会話を聞いて俺は花原さんの彼氏が誰なのかをようやく理解した。なんと花原さんの彼氏は同じ部活にいた笹本くんだったのだ。部活をしている中ではまったくそんな様子は見られなかったがどうやらそうらしい。それに気づいた俺は知らない相手じゃまだしも知ってる相手じゃどうしようもない。同じ部活である以上間違いなく俺と花原さんがどういう状況かを知っている。正直あの聖城との練習試合のことを怒られても否定できない。

「どうすればいいんだ俺は」

花原さんとどうすれば仲直りできるかと考えてもたもたしていたせで完全に出遅れてしまった。心のどこかではもうすでに明西さんが側にいてくれるのだから諦めるかという考えも一瞬思いついたが、明西さんには悪いけどそれは俺の本心に反するということですぐに却下した。何とかするしかないだろ俺、そう思いながら今日は花原さんと笹本くんに見つからないように時間を置いてから今日は明西さんは用事で先に帰っているから一人で家に帰った。

「ただいまー」

「お兄ちゃんおかえりー」

「ぐほっ」

俺を見るなり菜々は大きな声で言いながら突進と言ってもいいような勢いで飛びついてきた。不意打ちでそれをもろにみぞおちに食らってしまい変な声を出してしまった。正直一瞬息が止まって死ぬかと思った。

「お兄ちゃん大丈夫?」

「ケホッケホッ、菜々は俺を殺す気か。もうちょっとやさしく相手してくれ」

そう言いながら自称兄チョップを菜々の頭に食らわせた。

「うっ、ぷぅ~。お兄ちゃんこそもっと菜々に優しくしてよ」

チョップされた部分を両手で擦りながらぷぅっと頬を膨らませて言い返してきた。相変わらず甘えん坊な奴だ。

「菜々が突撃しなくなったらな」

そう言って菜々の頭を撫でてやってそのまま自分の部屋へと向かった。