ミックスラブルス

「もう夕方だからそろそろ最後にしない?」

「そうだね。じゃあ最後に観覧車に乗ろうよ」

笑顔で俺の顔を覗き込みながら聞いてきた明西さんにそろそろ最後にしようと言ったら少しの間まだ物足りなそうなうつむいてからその気持ちを隠すかのように明るい笑顔で賛成してくれた。

「いいよ。最後に乗る観覧車ってどんな感じなのかなぁ」

「すっごくいいよ」

「どんな意味で?」

「秘密~」

「できればそこ教えてほしいなぁってそんなに引っ張らなくてもちゃんと行くから」

「早く乗りたいの」

「そっか、じゃあ急いで行くか」

「うん」

こうして二人で観覧車の場所へと向かった。この時俺は明西さんの決意にまだ気付いていなかった。

「着いたよダーリン。早く乗ろう」

「逃げないからそんなに引っ張らないでぇ」

観覧車の前に着くなり明西さんは笑顔でぴょんぴょんと小さく跳ねながら俺の腕を引っ張ってきた。明西さんを落ち着かせようとしながらも楽しみにしていた観覧車を目の前にすると自然とわくわくしてきた。

「ハイこちらへどうぞ」

俺たちは少し順番待ちをした後に順番がまわってきて係りの人に呼ばれた。そして係りの人に案内されて観覧車に乗り込んだ。

「なんかすごく揺れそうだなぁ」

「そうだね」

「観覧車の中って思ったよりも広いんだなぁ」

「そうだね」

「あれ、どうしたの?観覧車に乗ってからずっと表情が暗いけど」

雰囲気をよくしようと話しかけても返事しかしてくれなかったからどうしてだろうと不思議に思い聞いてみた。

「ねぇ、高畑くんは今好きな人いる?」

「え・・・」

急に上目遣いで俺を見ながら好きな人がいるかと聞かれるとは予想してなかったからあまりの驚きに言葉を失った。

「どうなの?」

俺が黙って答えないと明西さんは答えを待ちきれないのか再び聞いてきた。その答えに誰もいないよと答えようとした瞬間、明西さんの背後に同じような表情をしながら俺に話してきた時の花原さんの姿が見えたような気がした。その瞬間俺の答えは決まった。

「いるよ」

「誰なの?」

「花原さん、花原りささんが好きなんだ」