急に上島先生に試合をするように言われた。

「じゃあ俺は試合が入ったから行くな」

「うん分かった、頑張ってね」

「おう、頑張ってくるよ。花原さんもね」

そう言って俺は花原さんに笑顔で手を振って試合をする3番コートに向かった。今日は調子が良かったのか思った以上に理想的なテニスが出来ていい試合が出来た。しかし結果は2試合やって1勝1敗という半々な結果になってしまった。まぁリバースサーブも決まったから悔いは無いんだけど。

「はぁ~、今日はいい試合をしたなぁ」

「そうか、すごく厳しい試合をしてるように見えたけど?」

今俺は試合を終えてコートの外の荷物置き場のところから他の人の試合を見ていた。俺が独り言をボソッと言うと光輝がジュースを飲みながら不思議そうに話しかけてきた。

「何言ってんだよ光輝、すごく厳しい試合だったからいい試合だったんじゃないか、簡単に勝てる試合じゃあやっても練習にならないだろ」

「まぁそうだけど」

そう言いながらもなんか言いたそうな目で俺を見てきた。

「だろ?だから俺はいい試合だって言ってるんだよ、自分のためになるいい試合だってさ」

「龍は本当にすごいな、厳しい試合が自分のためになるなんて考えられるんだからさ」

そう言って光輝は持っていたジュースをまた飲み始めた。俺はジュースを飲んでいる光輝を見ながら何でそんなことを言うのか不思議に思った。

「何言ってんだよ、人間努力無しじゃ何にも出来ないと思うよ、俺は」

「あぁ、そうだな。だけど俺には龍みたいな前向きな考え方は出来ないよ」

「何で?」

「だって普通はみんな努力なんてしたくないからな。それを苦だと思わないで自分のためになってるなんて考える人は少ないと思うよ」

「そうかぁ、俺にはそう思えないけど」

「そんなことないって、お前はすごく前向きな性格なんだからさ、少しは自分に自信を持てよ」

光輝はそう言いながら俺の背中をポンポンと叩いてきた。

「ありがとな、俺もある程度は自分に自信を持っているけどそれ以上に目標があるからどうにも納得できないんだよな」

「龍はそんなに高い目標を立ててるのか?やっぱり龍はすげぇよ、俺なんてただ楽しくテニスできればいいやって考えてんのにさ」