「聞き方を変えると、すごいんだよ」




華は立ち上がり、話し始める。


華の足は細くて簡単に折れてしまいそうだ。




「…鳥のさえずりは、鳥たちが人に話しかけているみたいだし…」



ゆっくり、落ち着いた声で。




車のエンジン音はリズムを刻んでいるように聞こえる。



人の話し声は歌に。



コンクリートを突くヒールの音は今にも踊りだしそう。




華は楽しそうに話している。



今まで俺が考えたこともなかったことを……。




「どう?」

「え?」

「意外といいでしょ、音も」




その受け取り方は新鮮ではあったが、納得できるものではない。



…普段、音を聞かないせいだろうか。




「あっ、大変!もうこんな時間だ!!」


華は左手に着いている腕時計を見て、何かを思い出したようだ。




「今日、塾あるんだった!…ネオくん、また会えるといいね!!」



元気よく『バイバイ』と手を振り、走って行ってしまった。




……そういえば、何が危なくて俺は落ちたんだ?




それを聞こうと思い、華が走って行った方を見る。




…しかし、すでに彼女の姿は見えなかった。




まるで、どこかに消えてしまったかのように…。