人と会話するなんて、どれくらいぶりだろうか。


俺は返事のしかたを忘れてしまったようだ。




「大丈夫だ」


その短い一言でも、少女は安心した表情を見せた。


…喜怒哀楽がはっきりしているのだろう。




「よかったぁ。あ、私ね華、木立 華(こだち・はな)って言うの」


よろしく、と言わんばかりの笑顔。




「あなたは何て言うの?」

「…袮緒、楠田 袮緒(くすだ・ねお)」

「ネオくんかぁ」




名前を呼ばれたのも久しぶり。


少女は首を少し傾け、笑いかけている。




その笑顔は、……なんだか今にも消えてしまいそうだ。




「…ぁ、俺のヘッドフォン…」




俺の頭から外れたヘッドフォンは、少女…華の横に落ちている。



「えっ?コレ!?」



ヘッドフォンは無惨な姿になっていて、使い物にはならなそうだった。