すると廊下で女将さんの声がして、障子が開いた。 「親父さん、遅くなりました。」 一人の青年が部屋に入ってきた。 トクン。 え……。何………? 急に着ていたものが締め付けられるような感覚に私はそっと合わせ目を緩めた。 ふう、と深呼吸をして、改めて青年に目をやった。 「私は、吉野家で居候させていただいている吉野佐助と申します。宜しくお願いします。」 満月に負けないぐらいのキラキラとした笑顔が印象的な人だった。 *