「ね、いっしょにばれーぼーるしよ?」
まだあたしが幼稚園に行っていたころの話。
お父さんに手をひかれて、町の体育館でバレーに精を出すお母さんの応援をしていた。気づいたら自分もボールを触っていて、よくわからないまま叩いたり転がしたり…。
ふと、大人ばかりの体育館を見渡せば、あたしとおんなじことをしている子供がいた。あたしより2つ年上の男の子。
「いいよ。ばれーぼーる、しよう!」
それが孝太先輩だった。
何だかとても嬉しくなって、いつもいっしょにお母さんたちの真似事をして遊んだ。
それから時間が経てば経つほど、あたしはバレーに夢中になっていった。
だけど、いつだって先輩のほうが一枚上手。きれいなサーブに鋭いスパイク。中学校のときには国体にまで出場した、将来有望選手。
あたしだって負けていられないと、猛練習したのに全然およばない。
そう、あたしには背が足りない。高校一年生になってもギリギリ150センチの小娘なのだ。
ちなみに先輩はもうすぐ190センチを超える、らしい。理不尽だ。