新月の夜

.キ。…もしもし?」
「義人、あさみが妊娠したんだ!」

義人は未亜から聞いているが知らないふりして、

「本当に?おめでとう。」
「どっちが生まれても嬉しい。うきうきして仕方ないんだ。」

未亜はナオキの声が聞こえてくすくす笑う。ナオキは、

「誰かいるのか?」

義人は嘘をつき、

「いないよ。」

未亜を抱いて、

「テレビ見てるからかな?消すよ。で、奥さんは?」
「元気だ。悪阻が出て、よく吐いてるけど、優しくさすっていると、お腹にいるんだなぁって実感するんだ。幸せだ。天使だ。」

義人は未亜にキスして、

「本多さんは何か言ってた?」
「喜んでたよ。だって妹だぞ。旦那は憎くても妹と子供に罪はないさ。いいおばちゃんしてるよ。っておばちゃんはかわいそうか。結婚してないし。」
「あ〜あ〜!!」

声が混じる。

(和也だ☆)

未亜はわかる。

「そのかわいい声は?」
「和也だ。喋りたくて仕方ないみたい。ふふふ。パパとママくらいはつたなくても言えるようになって、甘えん坊だよ。かわいい。おっ、歩いて来た。」
「パパ、パァパ。」
「どうした?」

和也はナオキに抱き着いて、受話器に向かって、

「あ〜!!」

叫ぶ。未亜はにこっ。義人は、

「和也君と話したいなぁ。20秒でいいから。」
「いいよ。和也、しゃべるか?」

ナオキは受話器を和也に渡す。

「だぁ?」

未亜は優しく、

「和也、また行くからね。」

和也は未亜だとわかり、

「だぁ☆」

にこにこ。

「だぁだだぁだだ☆」
「パパに返してあげて?」
「だ。」

和也はナオキに渡す。和也は未亜と喋れた嬉しさからくるくる踊る。ナオキは、

「何話したんだ?和也が嬉しくて踊ってる。」
「元気?いい子だねと話した。」
「ハハハ。和也ホントに不思議な踊りしてるぞ。見せたいくらい。」
「お嫁さんいる?」
「いるよ。踊りを見て笑ってる。」
「呼んで?」
「いいけど口説くなよ。」
「口説きません。」

ナオキはあさみに変わる。

「もしもし?おめでとう。体調はどうかな?」
「ありがとうございます。悪阻はお腹にいる証拠です。」
「逃げたらいけないよ。ナオキの苦しみを