新月の夜

きたみたい。」
「彼氏って悠ちゃんじゃ…。」
「悠には捨てられると思ったんじゃない?家族以外の。カ.レ.シ。」
「言えてる。父さん、また奈央が離れてくね。」
「何故に…。娘は嫁にやらんぞ。」

あさみは、

「早いね。奈央はまだ赤ちゃんよ。でもこのまま奈央は離れないわ。お気に入りになっちゃったもの。」
「……。」


仕事は終わる。奈央は兄から離れない。同僚から、

「奈央様のお気に入りね。」

と言われる。

「くれぐれも襲っちゃダメよ。」
「…襲いません。」
「でもびっくりだよね。社長の息子さんなんて。」

義人は、

「奈央のお兄さんですよ。」
「何故隠す理由があったのかなぁ?」
「和也君はここにいるから何とか言えたけれど彼は時が経ちすぎて言いに言えなくなってしまっただけです。本人としては本当に心を痛めてました。言えば社長らは親バカで、彼は親にすがりついた傲慢息子。勝手に考えた社長は、自分が苦しめているだろう愛しい息子が非難を浴びるのは嫌だった。ましては昔、口封じさせられて、言ったら子供と社長を捨てろと脅されて、父親だからと従っていたものの本当は毎日のように虐げられていることに泣いていた私の妻の妹をまた悲しめてしまう。話してから落ち着いてきた。みんなには見せなかったけれど軽いうつ症状になった時があって、社長は支えていました。それを子供達は見ていて、悪い子供にはならなかったけれど、だからこそ渋ってしまった。難しいのですよ。奈央は知れてから生まれました。苦渋の決断でした。愛する息子を堂々と言えない。今でも覚えている社長が電話で話したふたりの子供の父親になる報告。」
「それは?」

息子は聞く。

「それより少し前に付き合っていた当時の妻から聞いていたその話を直接聞いた時、社長は本当に喜んでいました。横にいた妻も受話器から漏れるその興奮した声にくすくす笑っていました。」


義人は未亜と抱き合っている。未亜はあえいでいる。

「未亜は感度いいね。」
「義人が誘うような目で見て来るから…ああっ!?」
「誘うようなじゃなくて誘ってるの。」
「そんな目で見ないで…あぁん!?」

突然、義人の携帯電話が鳴る。

「?」

義人は取る。

「誰?」

未亜が聞く。

「ナ.オ