新月の夜

一番愛しい妻。」


昼休みが終わり、戻る。
ナオキは呼ばれる。

「何でしょうか、矢野さん。」
「専務と本多さんの関係は何ですか？」

ナオキは淡々と、

「噂ですか？聞いた事はあります。ただ喋るだけで不倫ですか？不倫をするような勇気はありません。不倫していいことはありますか？相手や家族を傷つけるだけ。そこまで考えない程落ちこぼれではありません。」
「本多さんの子供を見ました。今日来ていますね。」
「…知らないな。」
「かわいいお子さんですね。４才だと聞きました。」

（和也…。）

「何故専務にそっくりなのです？本多さんの旦那さんは本当は専務じゃないのですか？」
「……。」
「認めますか？影武者なら簡単にできるはずです。」
「…かわいくないはずがない。甘えられて、パパ、と抱っこをせがまれて、にっこり笑って、幸せな癒される空間。２１の時に出会った１６歳の天使。一緒にいると癒されて、心地いい、週末にはデートをして、手を繋いで、キスして、ずっと一緒にいたい人。結婚、子供。二文字の言葉。考えると不安で、カラダの関係は簡単には持てなかった。それが彼女にとって、本当に愛されているか不安で、愛を問われた。愛されていないなら別れる覚悟で。気持ちを押し殺していた私は気持ちが高ぶって、彼女を抱いた。それから２か月くらい経った頃、彼女のお腹の中に命が宿っていることに気付いて、告げられた。」
「１回でですか…？」
「そうです。彼女は私の告げられた時の不安なカオを見逃さなかった。」
「不安？」
「この家系に生まれた因果。彼女はお腹の赤ちゃんが愛されていないと思い、一人で育てようと身重な体で旅に出た。」
「…そんな。」
「矢野さんが１年目だった頃でしょう。私はひどく焦って、仕事にも身が入らなかった。毎日捜して、捜し当てた時にはもう生まれるまで数えれるくらいで。逃げようとした彼女を止めて、プロポーズしました。そして、子供が生まれるのを待って入籍しました。」

ナオキは首にかけてあるペンダントを握る。そこには指輪が。

「プライベートではきちんと左手の薬指ににつけています。彼女、いや、あさみとの婚姻の証。二人の息子がいます。」
「なら、なぜ言わないのです？不倫という嫌な噂まであるのですよ！」
「…できないんだ。」
「父親ですよ