Escape ~殺人犯と私~

て、僅かな光が差す。



少年の前髪は、だらりと垂れて


まるで死に神のように顔を陰らせていた。



ギラギラ光るナイフが私の右目に向かってくる。




途端



私の右目の紙一重で、ナイフの先端がピタリと止まった。




私は死人のように、目を見張ったまま


目に焼き付いた恐怖に硬直していた。



そして急に



死人の少年は、ナイフを掴む右手を震わせて



ナイフは絨毯の上に落ちた。




悪夢から覚めた少年は、我に還ったと同時に

震える右手を凝視しながら自分の額を掴む。




少年の姿に、私は少年の身に起きた何かに気付き

死体のように転がしていた自分の体を持ち上げた。



少年は、過去のトラウマのフラッシュバックに苛まれ

息を切らし、震えの止まぬ右手を眺め続けていた。



その一方で、フラッシュバックを消そうと

左手で強く頭を抱えている。



多分

私のよりはるかに大きなトラウマを



この少年は抱えてるらしい。