Escape ~殺人犯と私~


演技で人の優しさをもてあそぶような人に指摘されて、悔しさが込み上げる。



目頭が熱くなってきた私は、キッチン脇の扉から廊下に出ると

脱衣場の向かいのにある少年の部屋に閉じ籠もった。



少年に理屈で泣かされた姿なんて見られたくないから、ドアに鍵を掛けた。



カーテンが閉まったままで薄暗く、静まり返った室内ですすり泣く。



何も言い返せなかった自分の姿に憤りを感じては

虚しくなって涙が止まらない。





涙ぐむ私の目に、衣装ハンガーに掛かったままの少年のコートが映った。



私は迷う事無くその衣装ハンガーに歩み寄って

少年のコートのポケットを探る。



人の荷物を漁るなんて、昨日はあれだけ躊躇っていたのに

少年に憎しみを抱いた今では、罪悪感さえ感じない。



でも結局、コートからは何も出てこなくて

次は、コートの隣に掛かっている学ランのポケットを探り始めた。



すると、学らんの内ポケットに何かが入っているのを確認して

私はそれを取り出した。


それは、少年の生徒手帳だった。

最大の目的だった相手の個人情報が

こんなにあっけなく手に入るなんて思いもしなかった。