Escape ~殺人犯と私~



私は、にわかに額に滲んだ汗を袖で拭いながら、疲労した足がよろめいたように見せかけて

さり気なく少年から距離を置く。



何か、この人おかしい…。



誰も追って来てないのに、駅からこんなに離れた人の居ない場所まで逃げるし。



この少年が放つ異様な空気に、私は激しい警戒心を抱いた。



何が目的なの…?なんて、恐れ多くて口が避けても聞けない。



声を発する事が出来ないでいると

二人の間には、雪の降り積もる音と遠くで響く車の音が沈黙と共に流れ始める。



そして、木の枝に積もった雪が重みに耐えきれず

ドサッッ。と落ちた。



私は思わずビクリと肩を揺らしてしまい、感情がつい態度に出てしまった。



正に今の私は、鳩が豆鉄砲を食らったように、間抜けた表情だったと思う…。



それを見た彼が、急に穏やかな表情を見せて、ほんの一瞬笑ったように、私には見えた気がした。