Escape ~殺人犯と私~

「違……電池が……」



電池が無くなったと伝えようにも、声が震えて声にならない。



怒りを押し込めた眼をしながら私へと歩み寄る。


私は隠すように携帯をポケットにしまい込んで、虎に睨まれたように無意識に視線を泳がせた。




この雰囲気の時は背筋が凍てついてしまって、まるで人形のように何の抵抗も出来なくなる。



人が通りすがりに私達を見物しながら、彼氏の周囲を避けて通っている。



障らぬ神に祟り無し。



威圧感丸出しの彼氏が近付いてくる姿に怯えていても、誰も助けてなんてくれない。



雑踏の中、彼氏が私の目前まで歩み寄って来た。


途端、私の右手首を掴み強引に駅の外へと連れ出す。



グイグイと引っ張られ、私の手首が痛くて千切れそうでも

私は一切の文句も言えずに黙り込む。



これから、いつもの暴力が始まる。


逃げるなんて出来ない。


だから、逆上させるような事は一切言わずに黙って従う。



彼氏と付き合い始めて最初にDV被害を受けてから、これが日課になっていた。



雪が大降りになっていて、前が見づ