「寒い……」



震える声で私が呟くと


まるでギブスのように、白いマフラーで首を固めた彼氏が

気だるそうに言った。



「早く歩け」



機嫌の悪い彼氏に急かされて

私の速度が早まる。



私はカレシとラブホテルに行くために


朝早くから学校をサボって、渋谷に来ていた。




淡々と歩き続けている彼氏は

私の手を引く訳でも肩を抱く訳でもなく

ホテル街のある道玄坂へと向かう。



ここでもし、私が歩く速度を緩めても

彼氏は私に気付かないで進み続けると思う。




こんな超無関心な態度を見せられたら


一般の女子なら付き合う理由を見失うだろう。



でも、この態度に慣れてしまった私は


別れる理由を見失っていた。




人の行き交う雑踏の中


心に「すきま風」を感じながら


少しだけ、歩く速度を緩めた。



シャリシャリ。と、雪の踏む音を聞く。




都心に積もった白雪は美しい。



でも、幾度となく踏みつけられて



美しかったはずの氷は時間が経つにつれ


まるで私の体みたいに薄汚れていく。




汚れた泥水が



私が中学の頃から履き古してるローファ