「俺、夢見てたんだな。」
真っ赤な目のまんま
翔くんはそう呟いた。
『男だから泣くな!』
っていうあたしの考えは、
このとき脳裏から消え去った。
だってそれは、
あたしのために流した涙だから。
「那奈ちゃんが逢沢を好きでも、俺はやっぱり那奈ちゃんが好き。」
床の先からあたしに視線を移して、
あたしと目線が重なり合う。
「だから諦める。」
「え...?」
諦める。
それはあたしのことを、もう
好きではいてくれないってこと?
そう思うと、キュンと胸が
締め付けられるような感覚に陥った。
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