「とにかく。早くこんなとこ抜け出して、帰るぞ。」
りっくんはくだらないといった顔つきで、あたしたちに命令した。
「那奈ちゃん。行こう。」
「う、うん…」
あたしも翔君の手を借りて立ち上がって、りっくんに続いた。
「やっぱ許せねぇ…」
小屋の扉の手前、りっくんが何かつぶやいた。
「りっくん?どうし…ッ。」
あたしがりっくんの顔を覗き込んだ瞬間、冷たい唇を生温かいなにかが覆った。
「んッ…。」
あたしはりっくんの唇と重なっていた。
それも、何度も、何度も角度を変えて。
「ッんん…。」
気づけばあたしはりっくんに迫られて、扉に張り付いていた。
「んッ?!」
意識が朦朧としてきた時、意識を取り戻せとでもいうかのようにりっくんは舌を絡ませてきた。
こんなのやだよ…。
キスは初めてじゃないけど。こんな…。
こんな激しいキスなんてあたしは…。
「もう止めてあげれば。」
りっくんの背後から、翔くんの冷たい声が響いた。
