「柚子も叫べば? 気持ちいいぞ」

「やだよ、恥ずかしい……」


「お前、毎日発声してるけど、あんな狭い教室でやったってつまんねーだろ。腹式の見本見せてやる」


 へ? と思っていると、朗先生は背筋を伸ばした。


「いーーーーーーーーーーーーーーーー」


 おぉ、腹から声出てます!! 凄い凄い。伸びてる音にブレのかけらもない。一定の音量、一定の音程、一定の息。男性の声量はやっぱりすごい。

 ずっと向こうで野球をしている人たちがこちらを振り返っている。


「……しかわのばかやろーーーーーーーーーーー! ふざけんなーーー!」


 えぇ!? 石川のばかやろう? って石川先生のこと!?


 びっくりして見上げると、朗先生はニヤリ、と笑って口元に指を当てた。シーって。


「独断はんたーーーーーい!」


 何のこと言ってるのかよく分からないけど……何だか気持ち良さそう。