先生と王子様と演劇部な私。

「いや、凄いなってことだよ」

 朗先生は廊下の窓に肩を預けると、大きく息を吐いた。

「それでも続けれるって、偉いよ。柚子は」


 先生は誰にともなく言っているようだった。


 確かに裏方として入った子はともかく、普通二年生頃にはコンクールと学園祭の年二回の公演で、どちらかには脇役でも出演しているものだ。


 でも私はこの春の……三年の春のコンクールまで裏方だった。


「まぁ、やりたい演目と違ったし、別に良かったんですよ……。今回も別に裏方でも良かったし」


 シンデレラじゃないなら別にいいんですよ。アピールする気にもならなかったし。



 ――シンデレラなら、絶対に負けないのに。どんだけでも食い下がったのに。



「強いな……」



 呟くように言うので朗先生を見上げると、暗くなった窓の外を虚ろ(うつろ)に見ている。