先生と王子様と演劇部な私。

「これ。その年の学園祭の四日前に骨折しちゃいました」


「えぇ!?」


 私は思わず目を丸くしてしまった。四日前って……。それ、どうにもならないでしょ?


「そう、普通はどうにもならない。けど、俺ら演劇部には朗がいた。と言うより、そんな短期間でやれる奴なんて朗しかいなかった」


 堀木戸さんが観客席からスッと朗先生を見上げた。


「最初は嫌がっていたけど、朗が王子様役を引き受けてくれたんだ。な、朗?」

「平の……代役としてな」


 ずっと黙っていた朗先生がボソりと呟く。堀木戸さんは目を細めた。


「そう、朗は俺の代役。でも、……残りたった三日しかない中で、朗は演じきったよ。柚子ちゃんが観たのは、その朗さ」


 つまり、コンクールの王子様は堀木戸さん、学園祭の王子様は……朗先生……。



「で、今回のことだけど。俺が王子様やろうと思ってたのよ?」