先生と王子様と演劇部な私。

「五年前、俺らが高三になったときに王子様に選ばれたのは俺、堀木戸平でした」


 堀木戸さんが得意気に自分を親指で指す。


「ちなみに、今は違うらしいけど、俺らの頃はコンクールと学園祭で主役級の配役は同じだった。これは知ってるかな?」


 堀木戸さんが私の顔を見ながらニコっと笑ったので、はい、と頷いた。


「つまり、コンクールも学園祭も俺が王子様ということに決定してしまったってわけ。朗はそれがショックで、演劇部に退部届けを出しちゃいました」


 堀木戸さんはわざと明るく言っているようだった。

 横を覗き見ると、朗先生は唇を噛み締めながら空を睨んでいる。


「コンクールはそこそこ成功した……と思ってる。朗が去った演劇部も何だかんだと上手くいってた。だけど、俺がちょっとやらかしてしまった。……なんと」


 そこで、堀木戸さんはチョンチョンと、自分の右足を指差した。