手を差し伸べてきている王子様は、朗先生だった。 眼鏡は掛けてないし、頭には王冠を被っているけど間違いない。 なぜ……? なぜ、王子様が朗先生なの……? 「美しい姫、私と踊ってくれませんか?」 普段の朗先生とは違う、綺麗に張った声が響く。 それは、記憶に残る王子様の声と同じで。 ――私に言ってるの? 「柚子、来い」 いつもの声に一瞬戻った朗先生が、はっきりそう言った。